透明
「好きな女の子のタイプは」
「透明感のあるコ」
そんな彼の言葉が、彼女に届いたのは彼女が真新しいセーラー服に袖を通した日だった。
四月から女子中学に通う彼女は、小学生の頃からの幼なじみである彼に片思い、父の陰謀で四月から、その時代その田舎では珍しいミッション系の中高短大一貫校の所謂、その地方ではお嬢様学校と呼ばれる名門校に入学した。友達と別れることも寂しかったが、何より彼と会えなくなるのが寂しかった若干満12歳の彼女の春を知ってか知らずか、名門女子中学のセーラー服姿の娘に父は燥いでいた。彼女がその中学を受験したのには訳が有った。その2年前の2月彼女の母は長年の病の末に身罷った。その母の母校、母との約束「お母さんと同じ中学に行って同じセイラー服を着てお父さんを喜ばせる」彼女は母との約束を果たしたが、初恋の彼は遠くなり、想いはつのるばかりなり。
ふと、そんな彼の噂を聞いて、春の日差しに気も漫ろで、「女性の透明感について考える」12歳の少女だった。
今思えば、その姿こそ、なんとも初々しくも透明感のある姿のように思えるが、当の12歳の少女には、「女性の透明感」なんのことやら考えあぐね「そうか!透明感は肌の白さだ!」に行き着く、「なんで?」と思いもしますが彼女は今、若干満12歳の田舎の少女ですから、目に写ったままに感想を述べる今時の情緒性のない子供と変わらないのかと思えばさにあらず、彼女は彼女で、「透明感」を「雪の白さ」のように捉えていたのでした。まだ、春浅い日に菜の花畑に降る、なごり雪、はらはらと舞い落ちては早春に咲く菜の花の黄色い花に吸われてしまうように、一瞬ひかっては消える。その白く儚げな様を「透明感」だと彼女は感じたようで、「なごり雪のように儚く白い…肌は透明感の証」となるわけでございました。
彼女の使命感にも似た「執念の美白」はその時から始まったのでありました。
夏は日焼けどめクリームは必須アイテム。帽子に日傘に夏でも長袖、夏服のセイラー服には、その当時は校則違反のカーディガンを肩にかけて、日傘をさして登校する。クラブ活動は屋内のものに限るエトセトラ…自分なりの拘りのルールを作り日夜美白に励んだ結果かどうかは分からないが、彼とのグループ交際は始まったがやっぱり、この春の日差しの中で、その初恋は終わりを告げる。最後の言葉は忘れもしない「同じクラスのコ、好きになった…」だった。
「同じクラス…」その言葉が、今度は彼女にとって、一番の「キラキラ、透明感」フレーズになったことは言うまでもない。
そうして、彼女たちは、高校1年生の春を迎える。女子中学もちあがりの女子高なのかぁ…彼女は悲嘆に打ちひしがれるが、なんと県下有数の名門女学院は、バブル景気と少子化の行く末を鑑み歴史ある女学院改め男子の入学を決め、彼女たちが高校に上がる年から男女共学となりもちあがりの女生徒と一般入試の男女が席を同じゅうする夢の「同じクラス…」フレーズの仲間入りをしたのでありました。
はてさて、彼女の「同じクラス…」物語はどうなりますことやら。 それは、また別の機会に。
この歳になりますと、学生時代そのものが透明で、キラキラとクリスタルのように光り輝くものに見えます。
まだあげ初めし 前髪の林檎のものと
見えしとき
前にさしたる 花櫛の花ある君と思ひけり
現代訳
まだ、前髪をあげたばかりのあなたが、林檎の木の下に現れた時、前髪に花模様の櫛をさしたあなたが、花のように美しいと感じた。
嗚呼、初恋は透明。
令和7年3月13日
心幸
後書き
透明なのに中身が見えないのは、きっとあなたの目のせいね😂 老眼鏡は、お持ちになった?
透明は透明、混じり気のないものを指す。
今日も、混じり気のない気持で生きましょう☀️
嗚呼、どうしてそんなにマイス思考で否定的なくせに人をどうこうアドバイスをしたがるのだろう?気の毒だわ。別にイイじゃない、少しくらい迷惑かけたって、みんなお互い様で世の中回っているし、大切な人だから一番側にいる人だから甘えて良いのよ(笑)甘えたら甘えさせてあげればいし、そんなの順繰りよ🤣 人を傷つける傷つけないのと騒ぐより、傷つけられたら、きっと蹴り上げた空き缶が今日は当たったのね、きっと何処かで誰かを知らずにでも傷つけた分今日傷付いてお相子と思えばイイじゃない。他責思考で自分だけが傷付けられているなんて考えると怨み節になっちゃうのよ。全く人を傷つけずに生きていますなんて自負する人ほど人を傷つけているものよ。完璧を求めるから生きづらいんじゃない😂
その昔、司馬遼太郎という作家が、こんなようなことを書いていた。「何でもないようなふりをして何時も笑っている人間の方が、心の内の傷も想いも情も深い」私はそれを信じている。
好きとか嫌いとか言っている時点で厨二病ー🤣🤣 本当は尖っていて透き通っていてだから自分が怖くて嫌い。好きとか嫌いじゃなくて尊いのよ、混じり気の無いものって。それは清濁併せ呑んでもう帰れないグレーに染まると判るわ。でも、その清濁併せ呑んで長いものにはくるくる巻かれる大人も尊いのよ多分きっと(笑)好きとか嫌いで語らないのが清濁併せ呑むってことでしょ(笑)そして直ぐに自分の好き嫌いや正義を持ち出して、「不透明だ!白黒つけろ!」って叫ぶのがキラキラひかる透明な純粋さだわな(笑)
3/13/2025, 11:38:06 AM