鶯になりたかった鳩

Open App

古びた旅館の 売店に

君は 並んで いた

パーマのかかったような 茶色の毛の

くま の ぬいぐるみ



瞳は茶色く 

首に巻いてある リボンさえも 茶色く

ぼくは まばたきをしない 君を

「バリバリ」と音のなる 財布に入れてある

祖母からもらった せんべつ で 買うことにした



それから ぼくは 旅に出るたびに

君を手提げに忍ばせた

「荷物になるだろう」 と 親に言われても

君と 記憶を 培った


君を お風呂にも入れて

もこ、もこと 泡を立てて洗った

脇の糸がほつれた時は 

「緊急手術」を 行った


君は 今 押し入れにいるだろう、か

過去の記憶を遡り 懐かしがっているだろうか

その点で やはり 僕たちは

似たもの同士と いえるだろうか

7/17/2023, 10:33:53 AM