古びた旅館の 売店に
君は 並んで いた
パーマのかかったような 茶色の毛の
くま の ぬいぐるみ
◇
瞳は茶色く
首に巻いてある リボンさえも 茶色く
ぼくは まばたきをしない 君を
「バリバリ」と音のなる 財布に入れてある
祖母からもらった せんべつ で 買うことにした
◇
それから ぼくは 旅に出るたびに
君を手提げに忍ばせた
「荷物になるだろう」 と 親に言われても
君と 記憶を 培った
◇
君を お風呂にも入れて
もこ、もこと 泡を立てて洗った
脇の糸がほつれた時は
「緊急手術」を 行った
◇
君は 今 押し入れにいるだろう、か
過去の記憶を遡り 懐かしがっているだろうか
その点で やはり 僕たちは
似たもの同士と いえるだろうか
7/17/2023, 10:33:53 AM