星明かり 2025.4.20
「うん……?」
俺がドアを開けると、暗いリビングの中で、弟がドアに背を向けて立っていた。
月のない夜だった。
リビングの開かれたカーテンからは、星の明かりがだけが差し込んでいる。
闇の中でも、立ちつくす弟の白いTシャツが浮いて、胸がどきりと音を立てた。
「兄さん……」
その背中が寂しそうで、俺は思わず声をかけた。
弟はその声に振り向くと、俺の目をひたと見つめた。
その目はいつになく憂いを帯びており、まるで何かを言いたそうに見えた。
しばらく時が過ぎ、ようやく弟は口を開いた。
「ごめん……俺……兄さんの期待に応えられない」
弟は目を伏せる。その手に持つスマホに指を滑らせたのか、光が弟の顔を照らす。その表情に俺はなぜか胸が騒ぐ。
「……」
俺は弟の悲しみに満ちた瞳の先に吸い寄せられる。
弟の手は力なく垂れ、持っていたスマホが、今は床を照らしていた。
俺は、そっと手を伸ばした。
「電気のリモコンの電池、見つけられなかったのならそう言えよ」
俺は弟が床に落としてしまったリモコンを拾った。
無事に部屋は明るくなった部屋の中で、俺は弟に、模様替えの際に変えた、電池をしまってあるところを教えた。
4/20/2025, 1:49:06 PM