厚塗りした絵の具のようなくもり空に僕は歩を進めている。右に視線を向ける。風に枯れ葉が舞い散る中、大きな木の先端つまりは木々の先にに帽子が止まっていた。声がして視線を向ける。木の根元、少女が泣いていた。彼女の帽子が強風にあおられて、あそこの木々まで飛んだのだろう。近づいて彼女に言う。「ちょっと待ってて、お兄さんが取ってあげる」「ホントッ!!」少女が笑む、晴れやかな表情。
風を待つ、帽子を飛ばし自分の手もとへ来るのを。風が飛んだ。今だッ、一瞬の隙を見つけ右手を伸ばす、右手には風で飛んだ帽子。「ありがとう」少女の笑みが満面に浮かぶ。僕はそれに手を振って道を進んだ。
2/20/2024, 6:42:45 AM