君と出逢ってから、私は・・・
「あ、懐かしい写真」
「それねぇ、お気に入りなの」
俺が手にした写真立てを横から覗き込んできた××は、けらけらと笑った。写真の中と変わらない笑顔が隣にあるのは変な感じだけど、考えてみればずっと××はこんな感じだ。
「この後食べた回鍋肉がさぁ、美味しくてさぁ」
「しばらくハマってたよな」
「そー。母さんにずっと作ってもらってた」
テレビ台に写真立てを置く。横には去年の誕生日に二人で作った謎の置物がある。一応シーサーを作ったんだけど、どっちもそこまで手先が器用じゃなかったので不思議な生き物になった。
「そういやシーサーってそのまま置くだけじゃ意味なかった気がする」
「え? そうなの?」
「なんだっけな、目覚めさせる方法がどうのって」
近くに置いていたスマホで検索をかける。
前まではこういうことは全部誰かに任せていた。××がぱぱっと調べているのを見てる間に「俺もスマホ持ってるんだよな」と思い出して、自分でも検索するようになった。今までもずっと持っていたのにね。
「塩かけたりするっぽい」
「へー?」
「片付け終わったらやるか」
おー、とゆるい拳を××が掲げる。
隣の部屋からうちへの引っ越しは変な感じだ。
「お昼は僕が回鍋肉作るからね」
「得意料理の」
「そー!」
ごろにゃん、とご機嫌な××が俺の頬にキスをして立ち上がった。まだ運んでいない荷物がある。××はうちから出て隣の実家に戻っていった。
残された俺はシーサーと写真立ての写真を撮る。同棲記念日、ということで何年か経ったときにこの写真を見たときにさっきの会話を思い出すのだろうか。
うん、そうだといいな。
5/6/2023, 12:43:33 AM