変な人だった。雨の日に傘を持ってこないような人。
先輩。曰く、片手が塞がるから嫌いなのだと。
馬鹿なんじゃないですか、と私は言うけれど、その人は私よりもずっと頭が良かった。
今、先輩のいない雨の日に、歩幅を合わせなくて良いことに安堵している。貴方に認められることだけを目標に生きてきた。他者の尺度。幸福。貴方は自由に見えた。固定観念に囚われない、効率主義者。貴方は傘をささないことで何かから身を守っていた。それを推察することさえ出来ずにいる。きっと雨は降ったままでいい。
私は何度も相合傘の二人を見送る。
世界の首都の、間違った回答を繰り返す。
8/27/2024, 3:55:09 PM