踊り場

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『一輪のコスモス』

おばちゃん家の庭には、いつも四季折々の花が植えられていた。
まだ幼かった私に、おばちゃんは庭の花を眺めながら言った。
「お花ってね、とても繊細な生き物だから、大事に育ててあげないとすぐに枯れてしまうの。私たちもお花と同じ。だから、周りの人や自分のことを大事にしてあげてね」
そして庭に行き、たくさんある花の中から一つ選び、ハサミで切り取った。
「大事にしてあげてね」
と、一輪、花をくれた。

今日は、おばちゃんの命日。
お墓参りに向かう途中に花屋に寄り、あのときくれた花と同じ花を選んだ。
線香をあげ、お花をお供えし、手を合わせる。

おばあちゃん。毎日いろんなことがあるけど、元気に頑張っています。周りの人も自分のことも、大事にできています。私が笑っていられるように、元気に咲いていられるように、明るい陽の光で照らしていてね。いつもありがとう。

また来ます、と約束をし、私はその場を去った。
お墓の前には、色とりどりのコスモスが、気持ちよさそうに風に揺られていた。

10/11/2025, 9:27:55 AM