Frieden

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「誰よりも、ずっと」

「いや〜!!!昨日は大変だったね〜!!!あっ……悪いと思っていない訳じゃないよ?!!キミたち、本ッッッッ当にごめんね!!!」

自称マッドサイエンティストはいつもと変わらず呑気にしている。あまりにも呑気だからあれは夢なんじゃないかと思い始めていたが、どうやらそうではないらしい。

「キミたちには何かお詫びをしないとね……。特に今は格納中だけど、ヤツをおびき寄せるための道具としてボクが使っちゃったキミには……。」

苦虫を噛み潰したような顔で作業をしながら通信をし始める。

「おーい!!!聞こえるかい?!!昨日は本当に悪かった!!!だがキミたちのおかげで得られた成果はかなり大きいものだったよ!!!本当に感謝する!!!」

「……とはいえキミたちを酷い目に遭わせてしまったのは事実。そこでキミたちにお詫びをしようと思う。」

「まずは構造色の髪の、特殊空間に格納されしキミ!!!」
『声がデカい』
「ごめんなさい」

「キミ、その空間にずっといて不便だろう?!!だがそこから出るとかなり不安定な存在と化してしまうから留まって貰わざるを得ないんだ!!!」

「そこで!!!キミにはどこへ行っても安定して存在していられるためのいわばキミの『容れ物』を贈ろう!!!」

「まだ完成してはいないが、出来に申し分はないに違いない!!!安心したまえ!!!キミのその髪の色もちゃーんと再現するからね!!!」

『容れ物……?』
「便宜上そう呼ぶしかないんだから仕方ないだろう!!!」
『そして声がデカい』
「ごめんよ」

「……んで、危うく標本にされかけたキミには……えー……??何がいいんだろう……???」

「キミ!!!欲しいもの言って!!!ボクが用意できるものならなんだって用意するから!!!」

現金。
「え???」
非課税の。

「……おい!!!夢がなさすぎるだろう?!!!もっとこう、タイムマシーンとか、なんか欲しいもの、あるだろう?!!!ちょっと!!!ねぇ!!!!」

……。

「……分かったよ……。……んじゃボクのポケットマネーからこのくらい」
おい!!!やめろ!!!!!
この国の通貨をジンバブエドルにする気か?!!!!
もっと不自然じゃない範囲でくれ!!!

「……欲は無い癖に要望は多いな……」
「う〜む……非課税かつ不自然じゃない範囲で……??……あ、思いついたぞ!!!」

「キミ、次のジャンボ宝くじを買いたまえ!!!ちょこっと数字を弄ればキミが1等を当てることなんてお茶の子さいさいだよ!!!」

「ホントはあんまり良くない行為ではあるんだが仕方あるまい!!!……本当にほかに欲しいもの、ないの……?」

いや、特には。
「そうかい……」

あ、そういえば。
自分も、悪かったよ。
「……???」

公認宇宙管理士の認定証割って。
「あ〜!!!」

そういやこいつは、自分たちに出会うまで、どんな風に過ごしてきたんだろう?
多分、その身を、想像を絶するくらいの時を、宇宙のために捧げてきたんだろう。

「まあ基本的には単独行動が多いかな〜」

ずっと、誰よりも、ずっと孤独なままで。

「……なんだいその目は……??」
いや、自分もお詫びをしないといけないと思って。
「何かしてくれるのかい???」

そこまではまだ考えてない。
「そうだな〜……それなら!!!」

「ボクが飽きるまででいいから、側にいたまえ!!!」
「あ!!!今ちょっと面倒くさそうな顔した!!!」

そう言いつつ、あんたは嬉しそうに笑った。

4/10/2024, 10:32:46 AM