好きの反対は、嫌いじゃなくて無関心なんだよ、と誰かが言った。
呆然と病室にいる。ゆっくりと日が傾いていく。
お前は静かにベッドに横たわっている。あんなにうるさかったくせに、俺より早く寝たことなんかなかったくせに、無防備に目を閉じた顔を晒している。あちこちに包帯が巻かれている。顔にはガーゼが貼られている。白くて清潔な布。口には太いホースみたいなのが突っ込まれていて、胸が異様に規則正しく上下していて、横には黒い画面に緑の稲妻みたいな線が這う、謎の計器が置いてある。
「なんで俺しか見舞いがいねえんだよ」
毒づきながら、俺は買ってきたプリンを自分で食う。
「おれお前しか友達いねーもん」
と、いつか情けない顔で笑っていたお前を思い出す。
「勝手に友達ヅラするな、腐れ縁だよお前なんか」
と邪険に返してもお前はへらへらと笑うばかりで、その顔にイラついた。
お前のことなんか全然好きじゃない。
はっきり言って迷惑してる。
電話が鳴るたびに、SNSの通知が来るたびに、心臓が跳ねる。ごめん、見舞い来てくれたんだって? って、相変わらずの情けない声で、頼りない顔で笑うお前を期待して、裏切られて、その度心臓が痛くなる。
お前はもう目を覚まさないかもしれないと言われた。あの日を最後に時間が進まなくなったお前の記憶、俺の世界をもう邪魔してこないお前のことを考えると、清々していいはずなのに、身の置き所がどこにもなくて途方に暮れる。
俺をこんな目に遭わせるお前のことは、本当に、心底、嫌いだと思う。
早く詫びに来い。
俺が今までこの病室で虚しく食ったプリンの分だけ詫びてみせろ。
3/25/2023, 10:38:42 AM