SAKU

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熱気がすごい。
非日常、それも喜びの催しである。浮き足立つ住人たちを横目に影になる場所を探した。
ひとつのことを協力して作り上げる、成し遂げるということは熱量が違うんだなぁと息を吐く。
ただそんな活気が溢れる街ではあるが、常とは違う状態というのは何かしら問題が起こる。
事故につながることであれば一大事だ。伝言なんて小さなことからそんな大きいことまで、危険の目を潰すのに友人たちと自分は引っ張りだこだ。
ありがたいといえば、仕事として受けているためそうなのだが、人が集まるところは未だ苦手に感じてしまう自分にはガス抜きが必要である。
人の目につかない物陰で静かに自主休憩をとる。昔と比較すれば、言葉も理解できるようになったためその分の負担は少ないが、人見知りは生来のものであるので。
壁に背を預け、先ほどもらった試作品の大きなクッキーを二つに割る。右手に持った方に影が差して大きな手がさらっていった。
代わりに液体がなみなみと注がれたコップを握らされる。
隣に立つ人物に目線だけ一度向けて手渡された飲み物を一口飲む。苦味が強いコーヒーだった。クッキーによく合う。
声をかけたわけでもないけれど、こうも読まれてしまうのは、馬が合うというかなんというか。
付き合いの長さはそれなりだが、共にいる時間は短いはずなので、何かしら通じるところがあるのだ。
こちらが渡したクッキーを美味しそうに口にする人物は甘いものが好きだよな、と今の状況に相応しい甘味を思い浮かべる。
りんご飴、わたあめ、カルメ焼き、チョコバナナにかき氷。
きっとここでは屋台が出ることはないけど、たまに似た食文化が顔を覗かせてくるので、馴染まないことはないだろう。
何かの折に振る舞ってやっても良いかもしれない。

7/29/2024, 9:55:10 AM