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「君を照らす月」

 「本当にちゃんと、帰ってきてくれる?」
 暗闇が支配していた部屋の中に、月の光が入ってくる。さっきは見えなかった君の表情が、月の光に照らされて露わになった。
 不安そうに唇をキュッと噛み締め、瞳は涙で潤み、雫が月明かりできらきらと輝いている。
 「……うん。ちゃんと無事に帰ってくる。そうしたら一緒に暮らそう。」
 もう少しだけ、月が雲に隠れていればよかったのに。
 君のそんな表情を見てしまったら嘘をつくしかなくなってしまう。本当のことなど、言えるはずがない。

 必死に嘘をつく僕の顔は、月の光に照らされて、君の瞳にどう映っているのだろうか。
 

11/16/2025, 1:50:49 PM