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振り向いても目を凝らしても姿は見えない。
けど、足音は聞こえる。
少しずつ、けれども確実に。あなたの背後に近づいている。

もうどれくらい逃げているだろう。
あなたは追いつかれないよう必死に走っているが、足は棒のようで呼吸もままならない。
長い時間活動を続けた身体はとうに限界を迎えていて、少しでも立ち止まったらもう動けなくなってしまう。
ふらついて転びそうになるたび、そろそろ休んでもいいんだよ、という悪魔の囁きが聞こえてくる。
そんな囁きを振り払って、またあなたは走り出す。

追いつかれてはいけない、恐ろしいことが起きてしまう、なにがなんでも逃げなければ。
そんな、爆発しそうな恐怖を抱えながら、あなたは足を動かしている。

■■■の終わる足音が、あなたのすぐ後ろで鳴り響く。

『足音』

ハッと意識が覚醒する。スマホの時計を見ると、目覚めるには早すぎる時間。

「また夏休みの宿題が終わらない夢見た……」

夏休みなんて、何十年前のことだろう。
まるで昨日の出来事のような生々しさに、身体から冷や汗が吹き出す。
もう一度時計を確認するが、やはり朝とは呼べない時間のままだった。
安堵のため息を吐き、あなたは再び身体を横たえる。

■月■日の出来事。

8/18/2025, 2:41:37 PM