筒に入ったチョコレート菓子やグミ、飲み物やかき氷を、鮮やかでカラフルと、皆はよく言う。赤色がきれいだとか、青が好きだとか、この色が推しの色だとか。世界は色で溢れている。私一人を置いていって。
色が見えない事に気がついたのは、小学校の図工の時間の時。自画像を描くというもので、それぞれが、思い思いに描いていた。私は、自分に見えている色通りに描いていたが、世界で見えている色では、私は紫で肌を描いていた。
後日、病院にて
「これは…奇病の一種ですね。運命の相手を見つけなければ、色を認識することは出来ないでしょう。」
先生は言った。
「大丈夫ですよ。この世は色々な奇病があります。それぞれがそれぞれの病を抱えています。お子さんのように運命の人による完治も、珍しくはないのですよ。」
この世は奇病だらけだ。天使のような羽が生えたり、目から宝石が出る人、花を吐く人、いろいろいる。私もその一種になっただけだった。
病状を伝えられた日から、人のことを意識し始めた。仲の良い人の側にいても、私の世界がカラフルになることは無かった。好きな人ができても、世界は無彩色だった。
世界から色を奪われ、年月が経つにつれてだんだんと、運命の人とか本当にどうでも良くなっていた。運命とか関係なしに、私は好きな人達と過ごしていった。
ある日、外を見るとシトシトと雨が降っていた。
「最悪…。折りたたみ置いてきちゃった…。」
走って帰ることを覚悟し、雨の中へ出ようとした。その時、後ろから背中をトントンと叩かれ、咄嗟に振り返ると、傘を持つ1人の女の子が居た。
「傘…いる?」
その言葉と同時に世界がカラフルになった。青色の長傘を持つ黒髪ロングの女の子。頬を染めて、こちらを伺っていた。
「え…で、でも、そしたら貴方が濡れちゃうよ。」
「いいの。私、折りたたみあるし。それに家も近くなの。」
そう言うと、彼女は笑った。しかし、傘を借りる分際で、長傘など使っていいのか。ここは、折りたたみを私が貸してもらうべきなのではと、葛藤していると、シトシトと降っていた雨は止んでいた。
「あ、虹だ…。」
そう彼女に言われ、空を背にしていた私は振り返った。
生まれてはじめて、色付きで虹を見た。日が差し込む空も、白と灰色に交じる雲も。
「はじめてみた…。」
「え!?はじめて…!?」
彼女は驚いた顔をしていた。私は彼女に本当のことを打ち明けた。
「私、奇病で、色が見えなかったの。でも、今は見える。」
「奇病だったんだね。私もなの。私は声が出ない奇病だったの。でも、今は話せる。」
え、と声を漏らした。それはつまり、私と居る瞬間に、奇病が完治したという事だ。私は、聞いた。
「その、奇病の治療方法って。」
「運命の人に出会うこと。」
その言葉を聞いた途端、更に私の世界は鮮やかになった。
「私も。」
自然と口から溢れた。目に見えている色は、さらに濃く、カラフルに映った気がした。
No.7 _カラフル_
5/1/2024, 12:18:33 PM