Open App


今日は妹と一緒に依頼を終えた

魔物と遭遇したこともあり
妹は少し疲れたように見える

早めに報酬受け取って
宿に戻るか

―宿に戻る途中
妹が あ…っ! と声を上げる

街の広間の方へ視線を向けている妹の視線を追えば
そこには何やら芸をしている人達が数人
旅芸人だろうか…

この街の人たちを前に芸を披露している

盛り上がりを見せ始めたのは
街の人たちが楽器を持ってきて
楽しいそうな音色に街が包まれた頃だ

隣の妹が袖を引いて
もっと近くに行こうと笑顔を見せる

―小さい時からこういうのが好きだったな、と
懐かしい気持ちになりながら頷き
賑わっている輪に加わる


父と母に特別にと、こっそり街へと降りて
こうして2人で旅芸人の催しを見に出かけたこともあった

あの時も
こうして俺の隣で楽しそう笑っていた
落ち着いていられてなくなったのか
音楽に合わせて妹の体が動いているのが分かる

すると、その妹の姿を見た旅芸人の一人の女性が妹へ
こっちくるよう声をかけ、手を差し出していた

ぱあぁっと表情を明るくして
弾かれるように走り出し
女性の手を握る

街の人たちも妹に続いて踊り出す


俺はそれを嬉しく、幸せな感情が胸に溢れ
笑みを浮かべてしまっていた



普段笑うことが少ない妹が
もっと笑っていて欲しい

どんなに今が暗い道が目の前にあったとしても
楽しいことには心から楽しいと、笑っていてくれ―




[これからも、ずっと―「2人きりの旅」老爺(兄)視点―]

4/8/2024, 4:37:04 PM