わをん

Open App

『平穏な日常』

朝。犬の散歩にゆく。真冬に比べて日が昇るのが早くなったので、日の光を浴びながら歩いているとだんだんと目が覚めてくる。昨日降った雪は屋根の上や農地の土をまぶすように薄く積もっていた。小春日和に咲いていた小花のあたりを犬がしきりに匂いを嗅いで、鼻先に乗った雪はわずかに留まったあとに水となって消えていく。
「鼻冷たいね」
答える代わりにくしゃみをした犬は散歩の続きをずんずんと歩き出す。
昨日も今日も同じように思えてしまうけれど、犬を見ているとどうやらそうでもないらしいと思えてくる。昨日には無かった木の枝を咥えてみたり、昨日には無かった匂いを探り当てようとしたり。
風の中の匂いに神経を集中させているかのように佇んでいた犬はやがてまた歩き始めた。なにか新しいものを見つけにいく足取りは今日も軽やかだった。

3/12/2024, 3:41:30 AM