リリちゃんのこと、大好き。ずっと大好き。
初めてボクを見たリリちゃんが、あまいあまいお砂糖みたいに笑ってくれた、あのときから今日まで、いつだってリリちゃんのことだけ見てきたんだよ。
『莉梨ちゃん、お誕生日おめでとう』
『わあ! おおきなクマさん!』
リリちゃんの声も、寝顔も、ママに怒られて泣いちゃった顔も、みんな宝物。
リリちゃんがボクと一緒に遊んでくれたから、リリちゃんのお部屋、大好きだよ。
『ママ、この子の腕取れそう』
『あなた振り回すんだもの。縫ってあげるから、貸してごらんなさい』
『リリ、今度のお誕生日、ウサギさんが欲しいな。大きくてフカフカなの』
『この子くらい?』
『そう、その子くらいの!』
ボクを見てくれるリリちゃん、にっこりしてお日さまより眩しい。腕なんて、気にしなくていいから、また遊ぼうね。ママ、早く治してよ、リリちゃんが待ってるから。
『ハッピーバースデー、莉梨ちゃん』
『やったウサギさん! かわいい!』
新しいお友だちが来て、良かったね。リリちゃんが嬉しそうで、ボクも嬉しいよ。新入りさんも、リリちゃんと会えて嬉しそうだね。きっとすぐにこのお部屋が大好きになるよ。
『ねえ、本当にこのクマさん、もういらないの?』
『うん、汚れちゃったし、この子がいるから』
ママ、リリちゃんを怒らないであげて。
ウサギさん、リリちゃんをよろしくね。ボクの大好きな子なんだ。ボクの代わりに、リリちゃんとたくさん遊んであげてね。
リリちゃん、ウサギさんよりフカフカじゃなくてごめんね。汚れちゃってごめんね。
腕が取れちゃうくらい、たくさん遊んでくれたこと絶対忘れない。ボクの大切な思い出だよ。
バイバイ、リリちゃん。バイバイ、大好きなお部屋。ママも、ボクをここに連れてきてくれてありがとう。
ボクは次は、ウサギさんよりもっとフカフカに生まれ変わりたいなあ。
そうしたら、来年は、きっとまた、
(失恋)
6/4/2023, 12:31:44 AM