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今日も電子の海へダイブする。

ネットサーフィンという言葉も、最近はとんと見かけないが、死語になってしまったのだろうか。
そういえば、ネット界なんて言葉も最近は見かけない。
時代は変わるものだ。

電子の海は、様々な色や文字で溢れている。
その数たるや目眩がするほどであり、数えていたら寿命が尽きてしまう。
何せこうしている間にも、電子の海は膨張しその体積を増やしていく。
恐ろしくも美しい光景だ。

そんな電子の海にある多くの物事は本当で、本当の分だけ嘘が紛れている。

例えば──電子の海で使用する、名前、性別、年齢。アバター等を使うなら見かけまでも、ここでは嘘偽りがまかり通る。
電子の海とはそういうものだから。

故に、現実では大変とされる「存在の消失」もここでは容易い。

アカウント削除のボタンを押す──たったそれだけ。

消して暫くは覚えている人もいるだろうが、いずれは電子の海にのまれ忘れ去られる。
実体が無い分、その速さは現実と比較するまでもない。

昨今はAIが誕生して、まるで人が作ったかのように見える文章や絵が電子の海に出回っていたりもする。

そういった諸々の背景があるからだろうか、電子の海を漂っていると、「画面の向こうに生身の人間がいる」という感覚が薄れやすい。

昨今のSNSでの摩擦を見るにつけ、その傾向は著しくなっていると感じている。

この文章を読んでいる貴方は、画面の向こう側にいる私の姿が見えるだろうか。
その私は、ちゃんと生身の人間だろうか。

電子の海を漂う時、一抹の寂しさを覚えてしまうのは──SNSで交流しようと──表面だけしかその人の事を知らず、本当の意味では「何も知らない」のだと気付いてしまうからだ。

電子の海では、嘘も本当も綯い交ぜになって存在する。
その中で本物を見つけるのは、容易いことではない。

そんな電子の海へダイブし
──今日も私は、ここで言葉を拾う。

嘘や偽りのある世界で
キラキラと光りながらも隠れる
本物を見つける為に

光って見えるそれが幻だとしても
一抹の悲しみを見つけたならば大事に胸にしまい
示唆を得たならば反芻する

その言葉が自身を巡り、
新しい言葉となって
電子の海に還ることを祈りながら

嘘と本当の海へ、
穏やかなものを返せることを願いながら

8/23/2024, 2:58:57 PM