「どこまでも」
白い翼をはためかせて、自由に、どこまでも飛ぶことが私の幸せだった。
でも成長していくにつれ、自慢の翼は縛られ、カゴの中で、課された仕事をこなすことで生きてきた。
ふと空を見上げると、鳥たちが戯れながらどこかへ飛んでいく。あの鳥たちはどこまで飛んでいくのだろう。あの眩しい青い空はいつから遠くなってしまったのだろうか。
背中の翼に目をやる。鎖で縛られ、とても飛ぶことなどできない。外そうかと何度も考えたがどうしても勇気が出ずできなかった。その鎖に手をかけ、少しずつ外していく。そしてカゴのドアに手をかける。きぃ、と甲高い音と共にドアが開いた。
こんなに簡単なことなのに、怖くて勇気が出なくてできずにいた。いつのまにか、カゴの中の安定さに安心を覚えてしまっていたのだ。
けれどやっぱり、あの空を自由に飛び回りたい。風に乗ってどこまでも飛んでゆきたい,
真っ白な翼を大きく広げる。久しぶりの感覚に違和感を感じるが、まだまだ動かせそうだ。
そうして思い切り床を蹴り、カゴの外へ飛び込んだ。翼を大きく羽ばたかせ、風に乗って飛ぶ。
ついに勇気を出してカゴから出てきたのだ。この先はどうなるかわからないが、気にしていても仕方がない。
私は一歩を踏み出した。これからはもう、どこまででも飛んでいくことができるのだ。
10/12/2025, 2:22:51 PM