たーくん。

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寒さが長引き、急に暖かくなった四月。
夜まで暇潰しにベッドで寝転がっていると、スマホに電話が掛かってきた。
相手は、同じ学校のクラスの山下。
「よぉ!大樹!青春してるか!」
「いきなりなんだよ山下。急に暖かくなって頭がやられたか?」
「俺はいつでも健全だぞ。イヒヒ」
山下が下品な笑い方をしているということは……また何か企んでいるな。
今回は何をしようとしているんだ?
「で、要件は?」
「俺と夜桜見に行かないか?イヒヒ」
「はあ?なんで男同士で見に行かないといけないんだよ」
「絶好の花見スポットがあるのさ。場所取りはもうしてある。行かないか?」
「悪いな山下。俺は今夜、彼女と花見に行くから無理だ」
「最近出来たっていう彼女か……。そかそか、沢山青春してくれ。仕方ない。俺一人で覗くことにしよう」
「えっ?」
なんて言ったか聞き返そうとしたが、既に電話は切れていた。
ま、いっか。
夜のデートに備えて、少し仮眠しておこう。

彼女と来た場所は、隣町にある大きい公園。
公園内のあちこちに桜の木があり、隠れた花見スポットらしい。
桜は満開なのにライトアップはしておらず、折角の桜が残念に思える。
光は街灯のみで、少し薄暗い。
「大樹、ちょっと薄暗いね」
「そうだな……咲子、俺から離れるなよ」
「うんっ」
俺の手をぎゅっと握る咲子。
今日はピンクのワンピースを着ていて、まるで春が歩いているみたいだ。
「どうしたの?」
「い、いや、なんでもない」
久しぶりに会った咲子に見とれてしまっていた。
とりあえず、明るい所を探すことにしよう。
……気のせいだろうか?あちこちから人気を感じる。
目を凝らしてよく見ると、男女が抱き合っているのが見えた。
それも一組だけはなく、何組も……桜の下で……。
うおっ、キスしてる!
おおっ!そこまでやるか!外で!
おっと……つい興奮してしまった。
薄暗い公園で淫らな行為をしている男女。
綺麗な桜の下でやるなんて、乱れすぎだろ。
「やだ……皆あんなことしてる……」
咲子も、俺と同じものを見てしまったようだ。
「大樹……あんなことをするためにここへ来たの?」
咲子の声が少し震えている。
「ち、違うんだ咲子!そんなやましいことは……少しはあったけども……いや、そうじゃなくて!」
「やっぱりそうだったんだ……大樹のエッチ!変態!痴漢野郎!野外魔!」
咲子は俺の手を払い、走っていってしまった。
すぐに追いかけようとしたが、薄暗くてすぐに咲子を見失う。
「イヒヒ。大樹、見ていたぞ」
この下品な笑い方は……。
振り向くと、山下がいつの間にか立っていた。
手には、望遠鏡を握っている。
「どうしてここに山下がいるんだ?」
「電話で言っただろ?絶好の花見スポットがあるって」
「……覗きか」
「イヒヒ。花見だよ。花見。大樹も気分転換に一緒に見ようぜ」
「そうだな……今はそうしたい気分だし、存分見てやる!」
山下から望遠鏡を借り、二人で花見を満喫した。

3/27/2025, 1:33:48 PM