NoName

Open App

 まさに今、義娘のお腹に小さな命が宿っている。
 初孫だ。
 私はどちらかというと親には不適合な人間だと思っている。
 だから息子のことも大切には思って育ててはきたが、溺愛したり、ましてやお嫁さんに取られたなどというと感情もなかった。不思議とお嫁さんは本当の娘のように可愛くて仕方ない。母性本能が欠如した親だと思ってきた。なので始めは息子が結婚したとしても子どもはつくらないかも…と言った時もそんなにショックではなかった。正直、別に孫が見れなくても寂しいとも思わなかった。
 それなのに妊娠したと聞いた途端に何故か、その小さな命が愛しくてたまらなく、早く会いたいとさえ思っている自分に、自分が一番驚いている。
 小さな命…小さいのにすでに大きな希望になっている。
  
 母親不適合な私は息子がお腹に宿った時も愛しくてたまらなかったことを、ふと思い出した。
 小さな命、それは本来、人を優しい気持ちにし、愛情ある者へと変えてしまう不思議な不思議な生き物なのだろう。

2/24/2024, 2:47:16 PM