星乃威月

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記憶は 時として 長さを変える



幼い頃

1日の流れを 詳細に覚えてた


人の臭い 手の温もり

砂の痛さに 水の冷たさ


いつ どこで 誰が 何をして……と 説明しては

「なぜ? どうして? 」と せがんだ



小学生の頃

『1日って なぜ こんなに長いの?』

と 疑問に思った


朝の澄んだ空気に 顔を掠め行く風


夕暮れとともに

様々に色を変える空や山々が いたく好きで

"早く 夕焼けになれ" と 心弾ませ

時を待ちわびた



中学の頃

忙しさに追われ

記憶は 一気に短くなった


誰かと 過ごし 物事を頑張った

そこでの感情は 存在しない



高校・専門学校の頃

自分の事なんて そっちのけ


人の事よりも 感情よりも

来る日も 来る日も "勉強" "勉強" の毎日



成人の頃

今後の仕事 将来の夢──


現実からは 目を反らし

今 目の前の一瞬なんて 眼中にもない



そして 現在

我が身を犠牲にし

何も残せない日々を 送ってる



多分 この先は

感情を失い 感覚を失い

記憶も失って

何も残せなかった過去を 悔やむのだろう……



できる事なら 叶うのならば

まだ感情を宿してた 幼き日々に戻りたい


過ぎ去る一瞬を 体全体の五感で感じ取り

「めっちゃ 楽しーっ!!」と

大声で叫んでいた あの頃に……



時は 戻せない

歳を追う毎に

嫌な記憶ばかりが 蓄積されて行く──


記憶だけでいい

若かりしかった あの頃の記憶に 戻りたい




ー記憶ー

3/25/2025, 8:06:06 PM