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『クリスマスの過ごし方』

「でも、遅くないですか。クリスマスの当日にプレゼント買いに行くって」
「いいんだよ」
 私の答えに、隣の少年は納得のいっていない顔をしながらも、それ以上訊いてはこなかった。その様子に、私はほくそ笑む。
「君の意見を是非聞きたいのだ」
「それはいいんですけど、僕の意見なんて参考になるんですか」
「私が見込んでいるのだ。そんな心配は不要だ」
「だって、あなた達と歳も全然違うのに」
 どうやら彼の勘違いは未だ続いているようだった。私は敢えて訂正せず続ける。
「君だったら何をプレゼントされたら嬉しいか、という基準で考えてほしい」
「構いませんけど、あの人たちがそれで喜ぶのかなぁ」
 隣の彼は首を捻る。ここまで言っても気付いていないようで、私は可笑しくなって笑い声が出そうになるのを堪えた。
 彼の言うあの人たち、とは私の同僚のデスマスクとシュラの事だろう。だが、私は一言も彼らのためなどとは言っていない。ただ、「クリスマスプレゼントを買いたいから付き合ってほしい」と言っただけなのに。
 街中にジングルベルが鳴り響く。隣の彼は時折それを口ずさみながら、私と歩調を合わせて歩く。その様子は少なくとも嫌々着いてきているようには見えない。彼も楽しんでいる、と思うのは私の願望が入り過ぎだろうか。
「そうだ、折角だからお茶しないか」
 私の提案に彼は不思議そうな顔をする。
「いいですけど、遅くなりませんか。プレゼント買って、渡しに行く必要だってあるのに」
「大丈夫だ」
 そのプレゼントは、君に渡すのだから。
 プレゼントを買ったら宮に戻り、買ったばかりのプレゼントを彼に渡す。そして、彼のために用意したケーキと花束を渡すのだ。その時の彼がどんな反応をするのか、今から楽しみで仕方なかった。
「何笑ってるんですか。早く行きましょうよ」
「あぁ」
 彼は早足になり、私の前を歩く。
 そんな彼の姿は、今日も愛おしく、輝いて見えた。

12/26/2023, 12:00:16 AM