湿った空気を胸いっぱいに吸い込む。嵐の前触れだと肌がざわついた。重たい雲がゆっくりと空を遮って、絶え間なく降り注ぐ雨が街全体を濡らしていく。光を反射する玉粒の水は私の身体を、濡らすことなくすり抜けていった。
私は半透明で、居てもいなくても構わない存在だった。余計なことはせずに、必要なときに求められたことをする。相手にとって都合のいい言葉を吐き続ける。人形のままごとをさせられている、そんな日々を繰り返した先に「自分の意志がないんだね」と嘲笑だけが待っていた。もう、疲れた。私にだってほしかったものくらいある──ただ、褒めてほしかった。頑張ったね、偉いねって受け入れてほしかった。そうしたら私はまだ生きていたかったのに。
2/25/2023, 2:47:58 PM