ミントチョコ

Open App

題 すれ違い

あ・・・

私は図書館で一人の青年とすれ違った

カッコイイ・・・去っていった青年を振り返る
爽やかな青いシャツに白いインナー、ジーンズを履いて、髪の毛も綺麗な黒髪・・・って
あれって河下くんじゃない?!

学校では地味な感じで前髪下ろしてたのに、今すれ違った河下くんは、髪の毛もきちんと整えてて、服装もピシッとしてて、とてもカッコよくて学校の河下くんのイメージと大分違った。

私は本を抱えながらしばらく河下くんが小さくなっていくのを見つめていた。
声をかければよかったかなって思ったけど、あまりに印象が違ってて、ぽかんと見送ることしかできなかったんだ。

次の日、いつものように地味な格好で登校してくる河下くんを見て、私は遠くの机からどうしてあんなに印象違うんだろうなと思った。
髪の毛だけなのかな?あ、メガネもかけてるし、それも違うかも。
わざわざメガネかけないほうがいいし、髪も整えてくればいいのに、と思いながらぼーっと机に肘をついて見ていた。

でも、なんでかな、声をかけられなかった。
それに、教室で見る河下くんの姿も、いつもよりカッコよく見えてしまったんだ。

「河下くん」

次の休日、図書館で河下くんを見かけた私は思い切って声をかけた。
もしかして会えるかも、と午前中から勉強していたことは河下くんには秘密だ。

「あれ?仁科さん」

河下くんはビックリした顔で私を振り返る。

「偶然だね」

ニコッと笑いかけると、視線をそらされた。
・・・あれ?

「あ、その本、魔法学校の本、私も読んだよ」

「本当?この本好きな人周りにいないんだ」

私の言葉を聞くと、河下くんは笑顔で魔法学校の3巻の表紙を見せる。

「そっかぁ、ファンタジーブーム、ちょっと前に終わったからね。私は全巻読んで、今度は上級魔法学校の本読んでるよ。続編なんだけど面白いよ」

「そうなんだ、これ読み終わったら次は読みたいと思ってる。マリーンが好きなんだよね」

「わかる、私が好きなキャラはね・・・」

いつの間にか近くのベンチに座って2人で話し込んでいた。
魔法学校シリーズは最近私のマイブームだから、話の話題は尽きない。

さっきはぎこちなかった河下くんも、打ち解けてくれたみたいで嬉しかった。

「河下くんとこんな話が出来るなんて!学校では大人しいでしょ?話したことなかったよね?」

「うん、人と関わるの苦手で、あまり目立たないようにしてたんだ」

「あ、だからメガネと髪の毛違うの?」

それと、さっき目を逸らしたのもそのせいかな?

「そう、家にいると姉ちゃんに出かけるなら髪整えてコンタクトにしろって言われる」

「なるほどね」

私はそんなふうに言われてしぶしぶ髪を整えてる河下くんを想像してフフッと笑った。

「似合ってるよ」

そして、河下くんにそう言った。
本心だ。実際にかっこよくて見かけた初日振り返ってしまったんだから。

「ありがとう」

河下くんは照れながら、でも素直にお礼を言った。

「仁科さんと本の話出来てよかったよ」

「また話そうよ!図書館来るでしょ?私もまだ続編借りたいし、魔法系の本が好きならまだオススメの本紹介したいし!」

「本当!?それは心強いよ。魔法系読みたいんだけど、どれがいいのか分からなくて、次に読む本とか迷ってたから」

「まかせて」

と、私は胸をたたく。

「お任せします」

おどけたように言う河下くんの言葉に2人で笑う。

「もっと早く話しかければよかったな」

そう言うと、河下くんも頷いた。

「そうだね、でも、これから沢山話そうよ」

と言ってくれる。

その優しいまなざしに、私はドキッとした。
カッコイイ河下くんにいまさらながら気づいてしまった。

「う、うん」

今度は私がぎこちなくなってしまう。
そわな私を不思議そうに見る河下くん。

これからの日常に期待とときめきの予感を感じながら、私は言葉を続ける。

「これからよろしくね、河下くん」


10/19/2024, 12:54:54 PM