「最悪…傘持ってないんですけど……」
いつもの雑貨店に寄った帰りに、雨に降られてしまった。
ぼうっと立ち尽くす間に雨は勢いを増していって、我に帰って気付いて屋根の下に行ったときには体中が濡れていた。
濡れた服がぴったりと肌にくっ付いて気持ち悪い。
乾くまでもう少しここで雨宿りをしていようかと思っていたとき、遠くから誰かが傘を持って歩くのが見えた。
誰かの迎えかなぁ、とか相合い傘でもするのかな、なんて思いながら、空を見上げた。
分厚く空を覆った灰色から、ざあざあと雨が降り注ぐ。
折りたたみ傘ってこういうときにあるんだなぁ、と考えながら空を見ていると、両肩をぽんぽんと叩かれた。
驚きながらも振り向くと、そこには高校生の彼ら二人がいた。
「あれ、どうしたんですか?こんな遅い時間に学校帰りとか」
「いやぁ…文化祭の諸々で生徒会忙しくて…最近はずっと残ってるよ」
そういう彼と、生徒会長の彼の目元に、僅かに薄く隈が出来ていた。
「それはお疲れさまです。…え、もしかして迎えに来てくれたんですかぁ?」
「いや、そう言うわけじゃないんだけど…ここ通学路なんだよね。それで通ったらたまたま居たから……」
なぁんだ、と声を出すと、二人とも顔を見合わせて笑った。
「とりあえず帰りましょ。二人とも寒いでしょ。俺もびちゃびちゃでお風呂入りたいし」
そう言って、俺は一歩ずつ踏み出す。
彼らも後ろから傘を差して歩いてきた。
8/27/2024, 1:36:29 PM