27(ツナ)

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寂しくて

私の母は寂しがり屋だ。どこに行くにも何をするにも私か父が一緒じゃないと嫌だと駄々をこねる。
私が結婚して出ていく時も最後まで私を引き留めようとして、うんざりした私は逃げるように母の元から去った。
私が去った後しばらくして、母がこの世を去ったと報せが届いた。
まさかとは思ったが、病死だったらしい。
私は「忙しい」となんだかんだ言い訳を作って葬儀以来、お墓参りはほとんど行かなくなっていった。

結婚して3年、子供が生まれた。
愛しい我が子、これからはこの子のために生きる。
幸せを噛み締めていたのも束の間、ある夜、寝ていると夢を見た。
亡くなったはずの母が私に会いに来て言うのだ。
「寂しくて寂しくて仕方がないの。その子、頂戴?」
「ダメ!」
と声を上げると、汗だくで夢から覚めた。

そして、そんな夢を見た翌日、最愛の我が子が亡くなった。原因不明の急死だった。
それから私は塞ぎ込んで外に出ることも減っていった。
でも少しずつ回復して、また子供を授かることができた。
今度は絶対に奪わせない。
子供が産まれてから私は主人や子供に執着するようになった。
どこに行くにも何をするにも、常に一緒。
「寂しくて寂しくて、仕方がない。」

11/10/2025, 10:44:03 AM