ほむら

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「それじゃ、気をつけてね。幸せになるんだよ」
「はい、行ってきます」

1年前、私たちは親元を離れて2人で暮らすことになった。それは私が就いた仕事の都合で、離れざるを得なかったからだ。それでも、彼は一緒に付いていくと言って、2人で実家から旅立った。

電車に揺られながら目指している先は、遠く離れた見知らぬ場所。行ったこともない、土地勘もない所だった。笑顔で手を振ったはずなのに、いざ離れると寂しい気持ちが込み上げた。静かに流した涙を、彼は見逃さなかった。

「大丈夫ですよ。俺がついてますから」
「あなたは、故郷を離れて寂しくないの?」
「全くそう思わないわけではないですが…あなたと暮らせる楽しみの方が大きいです」

彼は私の涙を拭いながら、微笑んでそう言った。ほら、外の景色が綺麗ですよと言われて車窓を眺めると、建物だらけだった故郷の景色から、山や川など、大自然の景色に変わっていた。クロスシートに向かい合わせで座りながら、車窓を眺めたり、談笑していたりしているうちに、私も楽しみの方が多くなっていた。

「そんな事もあったねぇ」
「はい、あれから1年経ちましたが、あっという間でしたね」

今ではしっかりと生活できているし、実家とも連絡を取り合っている。そろそろまた実家に帰ろうね、と私たちは帰省も兼ねた旅行の予定を立て始めた。

テーマ「1年前」

6/16/2024, 11:19:44 AM