ドンキーコングママ曰く、別に娘にするつもりで連れ去ったでない女の素性など興味はないが、今日まで飯を食わせて寝床を与えてきた居候がついに出て行く。
ドンキーコングママ。見た目がゴリラかジャイアンの母ちゃんのようだから誰ともなく付けられた。
居候は春を売るうちに段々と近しい友人も途絶え、書類に名前を書くことを酷く怯えてクチを聞けなかったが、骨ぼねしていた体付きも少しママに似てきてチークなしでも頬がうっすら赤らんで見えた。
ドンキーコングママ曰く、今度はこっちがげっそりしそうだ、と。
自営の酒屋でホールに居候を立たせるまで、どんな日々があったのか何と無く察するが、きっとそれで今日があるのだろう。
ある程度お客みたいなのも付いてきたけれど、ママは居候を外に出すことに決めた。
生まれてこの方初めて書いた履歴書には、ママの居酒屋の名前が揃った。
大人の習わしを短時間で叩き込まれ、けれども何かあれば頼って来いと餞別を据えられて、居候は人間好きになるために世間へ出る。
ドンキーコングママ曰く、過ぎて終わるだけのはずの歳月が違って見えた、と。
涙を湛えた顔を手拭きで覆っていた。
3/17/2024, 10:05:24 PM