バスクララ

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心を失い、こちらの声も届いているのかわからぬ青年に毎日声をかけ続けた少年がいた。
少年はその日あったことを青年に語り、青年は虚ろな目のまま虚空を見つめていた。
そんな日々が一年経とうかという頃、青年に変化が現れた。
青年が少年を見て、わずかに微笑んだのだ。
少年はそれに感動し歓喜の涙を流した。
そして青年の目からも一粒の涙が零れた。
その涙は誰のためなのか、何のために流したのか。
それは少年にも、おそらく青年にもわからない。
だが青年の心が戻りつつある前兆であるならば、それを阻止せねばなるまい。
青年は途轍もない力を神から与えられ、彼が心から願えば何でも願いが叶ってしまうのだ。
それこそ世界の滅亡でも、不老不死でも。
これ以上世界を好き勝手させるわけにはいかない。
それが勇者としての定めなのだから。
だが、一つ気がかりがある。
毎日声をかけ続けていたあの少年……どことなく青年に似ているような気がするが、あの子はいったい誰なのだろうか?

3/29/2025, 1:51:53 PM