うぐいす。

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 宇宙から酸素がなくなったら―――って考えてみた。
 宇宙から酸素がなくなったら、もちろん私たち動物は死ぬ。猫も犬も、眼前の檻の中で休日の父親のような体勢をするパンダも、遍く全て。
 そもそも、酸素がなくなる状況ってなんだろう。
 人間は酸素を生み出せないが、植物はそうではない。小学校の理科で習うやつだ。二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す―――光合成。酸素がなくなるということは、それを吐き出してくれる植物がなくなっているということに他ならない。
 人類は、都市開発が好きだからなぁ。
 と、自分も人類の一員のようなものなのに、それを棚にあげて呟く。
 だけどね、一員ではあるけど、被害者でもあるんだよ。と、パンダに向かって、言い訳のような何かを零す。故郷は、私が村を飛び出してから数年後に、ダム建設によって水の中に沈んでしまった。
 まるでアトランティスみたいに。
 神様でもなんでもない、ただわらわらいる人類の中の数人の仕業だと思うけれど。
 パンダがごろりと寝返りを打った。
 私の話には、どうやら興味がないらしい。
 私は一つ伸びをして、欠伸をした。
 時間があんまりにも余ると、こうやった生産性のないことを考えてしまうものだ。
 暫く経つと、子どもたちがたくさん園内に入ってきた。側にはエプロンを着た引率らしき先生がいる。
 子どもたちはパンダの檻に走って行く。先生がそれを窘める。
 一人の子どもが、檻の前に立つと、私を指差して言った。
「あっ、チンパンジーだ!」

5/14/2025, 11:00:08 AM