sairo

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長い夢を見ていた。

目の前が見えないほど深い霧の中、あてもなく歩き続けている。
一体どれだけの時間が経ったのだろうか。変わらぬ景色からは、時間の流れを察することはできない。
立ち止まり、息を吐く。胸に手を当てると、とくとくと暖かな鼓動が感じられ、密かに安堵した。
まだ生きている。まだ歩き続けることができる。
顔を上げる。再び足を踏み出せば、霧の向こうが僅かに揺れた気がした。
初めて見る変化に、そちらに向けて歩き出す。ゆらゆらと揺れる何が輪郭を纏い、誰かの影を形作っていく。

不意に、強い光が差した。
突然の光に目を細めながらも、影を見続ける。
正確には、目を逸らせなかった。
光によって大きく、濃くなった誰かの影。

その頭には、2本の角が生えていた。

10/20/2025, 9:44:06 AM