桜並木の土手を歩いていると、色々な人とすれ違う。桜を見ることなく忙しなく通り過ぎる人、写真を撮る人、昼間からお酒を片手に花見をするをする人、散りゆく桜の花びらを捕まえて遊ぶ人。
そんな土手で私はここ数年、不思議な出来事を毎年目にしていた。
ホラー的な体験ではないのだけれど、春先のある日になると顔立ちの整った体格のいい男性が白昼夢のように現れては消えるのだ。これがまた不思議な話で、現れる時は桜が竜巻のように巻き上げられてその中から現れて、消える時も同じように桜の竜巻に吸い込まれるように消えていく。その上、現れる男性の年齢も姿もバラバラなのだ。下は小学校低学年くらいの見た目の子もいれば、上はイケおじと言っても過言ではないような男の人が現れることもある。友人にぼかしながら話したところ、桜の精でも見たんじゃないか、なんて笑われたけれど、自分はそうは思わない。きっとあの人たちが神様なのだとしたら、もっと違うものの神様だ。
だって、あんなにも冷たい綺麗さだったのだから。
テーマ:春爛漫
4/10/2024, 3:38:09 PM