灰燼

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夥しい量の赤、赤、赤。
その中心に赤い糸で雁字搦めにされた人間が両腕を左右に縛り上げられながら座り込んでいた。
もう何日経ったか分からない。判断力も鈍っている。体の自由を奪われようと、自分が愛した人間に何をされようと受け入れる以外に選択肢がない。
周りの人間はあんな女狂ってる、別れたほうがいい、なんて言ってくる。それがなんだって言うんだ。そんなのはじめからわかってた。俺はそれすらも愛しているんだ。何をされても互いに互いを捨てることはない。とっくの昔に俺たちは狂ってしまった。

俺がいる場所に彼女は帰ってくる。

既に視界には相手しか見えなくなっている。
愛に溺れるように、赤い糸が二人を飲み込んだ。

7/1/2024, 6:43:04 AM