男は誰もいない公園のベンチに一人座っている。
服はバブル時代を想像させるような古びた服をまとい、その傍らには銘柄のリュックサックが置かれていた。帽子なら出ている長い髪はバサバサで無精ひげも伸びている。
いったいこの男はなにものだろうか?
少女は男に思わず話しかけた。
「こんにちわ。おじさん」
「こんにちわ。お嬢さん」
すると男が笑顔を浮かべる。
「おじさんはこんなところでなにしているの?」
「ちょっと休憩さ」
「休憩? 休憩終わったらなにするの?」
「歩き出すさ」
「歩き出す? どこへ?」
「さあね。僕は旅人だからね。とくに目的もなくいろんなところへ行くんだよ」
「へえ。楽しそう! 私も旅したいなあ」
少女は目を輝かせながら男を見た。
すると男は少女の頭を優しく撫でるとリュックサックを背負うと立ち上がる。
「もう行くの?」
「ああ。行くよ。僕の旅はまだまだ続くからね」
男はじゃあねと手を降って歩き出した。
もう日が沈みかけている。
さてと今日はどこに泊まろうかなぁと考えながら男は夕暮れ時の街を歩き出した。
「まあ。のんびり行こうか。ぼくの旅は続くのだから」
9/30/2025, 10:03:57 PM