烏羽美空朗

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頭を空っぽにして雨の夜景を見つめていると、時々、ふと考えることがある。

彼女が生きていたら、俺達は今頃夫婦になっていたのだろうか?

なっていたとしたら、その形や色はどんな物だったのだろうか?

毎朝彼女が用意してくれているトーストと紅茶の香りで目が覚めて、出勤前にキスをして、特別な日でも、そうじゃなくても、二人で、ただ笑って日々を過ごしていく。

俺の読み書きする小説のジャンルは恋愛物ではないので、これくらいのメジャーでベタな想像しかできないけれど、もしそうなっていたら、それはきっと幸せな毎日だったに違いないと思う。

……それか、全くの真反対か。

共にいれば、嫌でも相手の悪い部分を知ってしまう。
売れない作家と、そんなどうしようもない奴を好きだといってくれた特別なファン。彼女の優しさに甘えて、俺は自分のダメな部分ばかりを見せてしまうだろうし、彼女もきっとそれを許し続けてくれたのだろう。

ずっとずっと、彼女から奪って、生きて。そして死んでしまった後でさえ、俺は彼女に負担をかけ続ける。

しかし、互いに持ちつ持たれつ……こんなダメ人間の例ほどではなくとも、きっと、夫婦とはそういうことなのだと思う。

夫婦

11/22/2022, 11:11:15 AM