羽化

Open App

夢が醒める前に




夢と現実の境目とは、なんだろうか。
どこからが夢で、どこまでが現実なんだろうか。

ひとは、しあわせな夢を見る。
睡眠というのは死に一番近いとされていた。
…永遠の眠りとはよく言ったものだ。

幸せな夢。ゆめ。ユメ。
脳がツギハギな記憶を見せているのか?
自分に都合のいい物語を紡いでいるのか?
材料は、記憶、想い。それとも。




私には、大切な友達がいた。
…あの子は、私には何も言わず、学校から…飛び降りてしまったけれど。 それでもきっと、友達だった。


…あの子の、将来の夢。
進路希望調査には、「土」と書いてあった。
将来成りたいものが、土か。…バカバカしい。願わなくとも、いずれそうなるだろうに。

温室のような暖かさの教室。
同じ制服の二十九名。
柔らかで眩しい光。
木目が並ぶ床。
乱雑に散らばった紙。

それらを踏みしめて、窓側の席から立つ。
…誰一人、私の方を見ない。私のことを気にしない。
みんな揃って教卓を見つめている。

椅子を机に戻しつつ、私も視線を前に戻した。
…黒板には、無数に行方不明者の張り紙があった。
いま、床に散らばっている紙も同じだ。
ゆっくりと、目を凝らす。
張り紙の中で笑っていたのは、あの子の顔だった。

ああ、夢か。

気づいた頃には、もう窓の外へと飛び出していた。
全く。不愉快な夢だ。
…私は明晰夢を見る方法だって、夢から逃げる方法だって熟知していた。独特な浮遊感に包まれる… 
これで、起きられるはずだ。
地面が近づいてくる。
地面が近づいてくる。

…ああ、目が醒める前に、あの子に謝らなきゃな。
私は君に…なんにも出来やしなかったからさ。





夢と現実の境目とは、なんだろうか。
どこからが夢で、どこまでが現実なんだろうか。

地面にぶつかる直前、そんなことを考えた。

3/21/2026, 9:58:58 AM