白い小さな蝶が一頭、ひらひらと舞っている。
何かを探すようにひらひら舞っては枝葉に留まり、しばらくするとまたひらひらと飛び立つ。
鬱蒼と樹々が茂る中、射し込む光に翅が煌めく。
小さな蝶は時折風に煽られながら、大木に体を預けて眠る男の顔を掠めるように舞っている。
そんな男を見下ろす影。
男は目を覚まさない。
白い蝶は眠る男の鼻先から離れ、舞いながら影へと近付く。
ひらひら、ひらひら、
白い翅は雪のように二人の間を舞っている。
影はゆっくり腰を屈めると膝をつき、眠る男にじっと視線を合わせた。
規則正しい寝息が聞こえる。
眠る男の、柔らかそうな髪と戯れるようにして舞う蝶を、影は目で追い掛ける。
「·····んが」
きゅっと鼻を摘まれた男が上げる呻きに、影はくすりと小さく笑った。
END
「モンシロチョウ」
5/10/2026, 12:41:32 PM