『LaLaLa Goodbye』
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La luna canta.
La luce incanta.
La notte si ammanta.
Goodbye
月は歌い
光は魔法をかけ
夜は静かにヴェールをまとう
神があなたと共にあらんことを
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1枚の手紙がポストの中に入っていた。
だが、差出人も宛先も住所も何も書いていなかった。
綺麗な封筒に、金の刺繍が施されており並の手紙ではないことは分かったが、招待状にしては妙であり、そして、なぜ私のような人にこんなに立派な手紙が届くのかが疑問だ。
手の凝ったイタズラだと思うことにし、私はため息をつき部屋へ戻って行った。
部屋へ戻っても閉まりきったカーテンにその隙間から少しの光が漏れるだけで、真っ暗であった。
私に朝が来ることはなくて、永遠に夜のままだ。
私は机の上に手紙を置いたまま、椅子に腰をかけた。
部屋の空気は冷たく、この無機質な時計の針だけが一刻一刻を私に伝えた。
封筒の金の刺繍はこの暗闇の中でも静かに光り、私はそっとなぞるようにその刺繍に触れた。
何となく懐かしいような、そんな感じがした。
私は知らない間に眠りにつき、そのまま突っ伏して寝てしまっていた。
目を覚ますとそこには手紙はなく、小さな鍵が置いてあり、それは無くしていたオルゴールの鍵であった。
私は引き出しの奥深くに眠っていたオルゴールの鍵を開け、そっとネジを巻いた。
小さい頃によくおばあちゃんが歌っていた、子守唄が流れた。
私は一つ一つの音を確かめるように小さく口ずさみ、微かな記憶を追いかけた。
なんとなく窓を開けると、そこには満月が夜を照らし、そして、カーテンを揺らした。
「La voce della notte mi chiama...」
夜の声が、私を呼んだ。
私は1本足を前へと踏み出した。
10/13/2025, 2:50:40 PM