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「目が覚めるまでに」

三人を寝かしつけてそっとドアを閉めた。これからが私の時間。食卓の大きなテーブルにミシンを出す。

雫と澪と私、三人おそろいの服を作っている。雫と澪にはワンピース、私にはスカート、おまけで爽には同じ生地でよだれかけを作った。

服作りはミシンまでたどり着くのが大変だ。少しずつ準備を進めてここまでたどり着いた。複雑なところはカタカタと、直線はダダダッと、少しくらいずれたって大丈夫。縫い代と縫い始め、縫い終わりの処理をして、できた!

ここからは仕上げ。ミシンを片付けてアイロンを出す。縫い代を開いてアイロンをかける。ハンガーにかけて並べてみた。我ながら良い出来。目を覚ますのが楽しみだ。

カチャ。鍵の音がする。

「ただいま」と小声で言いながら、夫がリビングに入ってきた。

「おお!すごい」

「でしょ。お腹空いてる?」

「少し食べたけど、あるなら食べたい」

「今日は唐揚げだったんだけど、こんな遅くに無理かな。だめならお茶漬けにする」

「両方はだめ?」

「じゃあ、唐揚げは2個ね。待ってて」

さっきまで作業台だった食卓は元に戻り、洋裁職人だった私は、ただ夫が好きなだけの妻に戻る。

明日の朝が待ち遠しい。

8/4/2024, 6:56:52 AM