泣き疲れてベッドで寝ている彼女を見た。まだ幼い、あどけない寝顔にとくりと胸がなる。
ただ、目尻に残る腫れた跡だけが高鳴る心と共に居心地の悪さを感じさせた。
欲しい、と言ったのは自分だった。
そばにいてと願ったのも自分だった。
そこに彼女の意思はなかったのに、彼女は泣きながら日々を過ごしている。自分のそばに、自分だけのものにしたかっただけだったんだ。
「……ごめんね。」
彼女がこの家に来て、何年も経つのに。
彼女が泣くくらい、指導は厳しいんだろう。
彼女が泣くくらい、親が恋しいんだろう。
でも、もう返せない。戻れない。還りたくない。
幼い頭で考えても、出てくるのは彼女への想いしかなくて。それは大人に対抗するにはあまりにもちっぽけなもので。
それでもどうしても捨てられないもので。
「ごめんね、だいすきなんだ。」
自分の目から流れたものは彼女の手を濡らした。どうか、どうかこのまま一緒に大人になって。
願いを込めてまなじりにしたキスをする。どうか想いが届きますようにと無責任に思いながら。
【涙の跡】
7/27/2025, 7:58:45 AM