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「貴方の書く小説って、恋愛小説みたいだね」

「嬉しくないなぁ」

「どうして?」

「だって、恋愛小説嫌いだし」

「それは、失礼しました」

貴方は少し申し訳なさそうな顔をして、ねぎ塩が乗ったタンを美味しそうに頬張った。

貴方のカバンからはみ出してる、貴方と私がモデルの短編小説集がちらりと見えた。

ようやく、渾身の1冊が完成して、それがテレビでも紹介されるような受賞作にもなった。

出版してくれる会社も見つかって、少しづつ活動が忙しくなってきた時、唯一私の活動をずっと応援してくれていた貴方が、お祝いになにか奢ると言って焼肉に連れていってくれたのだ。

「それにしても、テレビで君の名前が出た時はびっくりしたなぁ。私、最近本屋とか行かないから気づかなかったけど、もう見た瞬間すぐ本屋に駆け込んだもん」

「それは、嬉しいね」

「でしょ」

「貴方って、本そんなに読まないのに、ずっと私の活動応援してくれてたよね」

「別に本は読まないけど、好きではあるからね〜。それに、貴方は絶対成功するって思ってたし」

「小説を投稿するアプリに登録したら、すぐ貴方に特定された時は私もびっくりしたよ」

「ふふん、私、君の作品は全部読んだからね。作風で分かっちゃうの!」

貴方はどこか、誇らしげだった。作品が受賞したとはいえ、まだまだ出版された作品はひとつだけ。貴方に自慢できるほどの何かを、まだ成し遂げた自覚はない。

それでも、これだけは、私も自信を持って言える。

「貴方は、誰よりも、ずっと私を応援してくれてる」

「なぁにを当たり前のことを言ってるのよ」

あっけらかんとしている貴方の顔。これだから、私は自分の夢を諦めきれないのだ。

4/9/2026, 12:37:39 PM