たかなつぐ

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テーマ『同情』

「辛かったよね」なんて、普段から人に囲まれてるあんたに
何が分かるっていうの?

人気者に、日陰者の気持ちなんて
分かるはずないでしょ

眩しいあなたがそばにいるだけで
私の心の闇は一層深くなる

私のことを思うならどうか
放っておいてほしい

これ以上私に、惨めな思いをさせないで

…でも、寄り添おうとしてくれて
ありがとう

分かってもらえなくて辛かったの
でもよく考えたら、誰だって

相手のことを完全に理解するなんて
不可能なんだよね

人気者に見えるあなたにも実は
心が翳る日だって、あったかもしれないのに

私、勝手なこと言ってごめんね

…また、一緒に遊んでくれるの?
ふふっ。本当にあんたは

お人好しなんだから



テーマ『0からの』

絵が上手いあの子が羨ましい
頭の良いこの子が羨ましい
足の早いあいつが羨ましい
容姿が整ってるそいつが羨ましい

わたしは何も無い
得意なことなんてない
他が100なら、わたしは0だ

授業中。気まぐれに、ノートの最後に
短編小説を書いてみた
ありきたりな、お姫様と王子様の
キスでハッピーエンドになる話

ページを破ってゴミ箱に捨てた
馬鹿馬鹿しい。こんなものを書いて何になる?

けど、時間が経つうちに
なんとなく、あの物語が恋しくなった

ゴミ箱に手を突っ込んで
ぐしゃぐしゃにしたページの切れ端を探す
…無い。掃除で出たホコリやチリしか入ってない

そういえば、今日はゴミ出しの日だった
ゴミ袋を持った生徒は見当たらない

もう袋の口を縛られて、持っていかれたのだと悟る

…捨てなきゃよかった
あの小説は、わたしにとっての「1」だったんだ
ずっと0だった自分が、初めて
100分の1だけ満たされたカタチだった

捨ててしまったから、また0に戻った
虚しさで胸が一杯になる

けど、虚しさだけじゃなかった
何故か、闘志のようなものも湧いてくる

もう二度と、作品をゴミにしたりしない
もう一回、今度はもっと面白い話を書いてやる!

「0からの出発だって、必ず1になれるんだ」
それを知ったわたしは
なんだか、無敵になった心地で廊下を歩きながら
頭の中で動き始める、次のキャラクターたちを眺めるのだった

2/22/2024, 9:37:26 AM