「ねぇ、今日はどうするの? 泊まってく?」
「んー、いや、出てく」
「……そう」
僕の好きな人は、恋人になってくれない。
「泊めてくれてありがとね。またいつか」
「ねぇ」
彼女が左のロングブーツのジッパーを上げてる時、声をかけた。
「好きだよ」
「うん。ありがとう」
「そろそろさ」
「また連絡するね」
僕の言葉を遮った彼女は、にっこり笑ってひらひらと手を振る。
別れ際はいつも『かわいい彼女』そのものなのに。
誰かの家を転々として特定の相手を作らない。
学部も学校も違うのに、近隣の大学で有名な彼女は『渡り鳥』と呼ばれている。
/5/29『渡り鳥』
5/29/2025, 4:25:32 PM