規範に縛られた軟弱根性無し

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「ねぇ、ほんとに私でいいの?」
「何を気にする必要がある?俺は君が好きなんだ!ミサキ。理由なんかいらない」
「嬉しい。嬉しいよ!ありがとう!私も大好き!」
彼女がなぜこんなことを問うのか。理由は、彼女が身体障害者だからだ。右腕、左手の親指以外の指、左耳、左目が無く、体全体に火傷を負っている。顔にも酷い火傷あとがある。高校生の時に、父親の寝タバコが原因で大火事になったそうだ。
つい1週間前、俺はミサキに意を決してプロポーズをした。ミサキは大泣きして、プロポーズにイエスと答えてくれた。
明日、俺の父親に結婚することを報告しに行く。ミサキと一緒に。
「カズキ君のお父さんに私どう思われるかな?」
「大丈夫だよ。親父は否定する様な人じゃ無い。安心して?」
「うん。カズキ君のお父さんだもんね。いい人だよね」
とは言いつつ、ミサキの顔は曇っていた。

その日の夜。
最初は2人で手を繋ぎながら、穏やかに寝ていた。
数分経って、ミサキはで俺の胸でポロポロ泣き始めた。
「やっぱり怖いや。私なんかがカズキ君と」
「ミサキ…」
俺はどうしてこの時、何も答えてあげられなかったのだろう。

「いつも車道側歩いてくれてありがとね」
「えっ?」
「私そういうとこちゃんと見てるんだよ?君のそういうとこ大好きだよ?」
「俺もそうやって可愛く人を褒めてくれるミサキが大好き」
「えへへ」
そんなことを話しながら、俺の実家に向かっている。
大丈夫だ。親父はミサキみたいな人を否定する人じゃない。きっと結婚を許してもらえる。何を心配してるんだ俺は。

実家についた。
母に客間に案内され、入ると親父がどっかり座っていた。
「親父、俺はミサキと結婚する。いいか?」
「お父様。私はあなたの息子さんを心から愛しています。確かにこんななりですが、それでも私が思っている愛は…」
「少し…息子と2人にしてくれないか」
「えっと…は、はい」
嫌な予感がした。
ミサキが部屋を出て行った。
「カズキ、なぜあんな女と結婚するんだ。不便じゃないか」
もうこいつと話すべきではないと直感した。嫌な予感はやはり的中した。
「…もういい。お前と話す義理はない」
「父親に向かってその態度はおかしいんじゃないか?」
親父は冷酷だった。最低なクズ男。
「あんな汚らわしい女のどこがいいんだ!よく考えろ。冷静になれ馬鹿野郎!」
「うるさい!黙れカス人間が。その口、針で串刺しにして開かなくするぞ!何も知らねぇくせに、なんで真っ向から否定するんだよ!」
「カズキ。最後のチャンスだ。あんな女とは馴れ合うな。このチャンスを無駄にするなら勘当だ。いいな?」
勘当。つまり縁切りである。
「上等じゃねぇか。お前みたいなドクズ野郎の息子になったことは、俺の人生の最大の汚点だ!二度と顔見せるな!」
あんな奴すぐに殺すべきだったろうが、それよりミサキが心配だった。すぐに部屋を出てミサキを探す。
ミサキは隣の部屋で待たされていた。十中八九親父の怒鳴り声を聞いているだろう。その証拠に、すでに泣いている。
「ミサキ。ミサキ大丈夫だ。あんなの気にするな。結婚しようミサキ。」
ミサキは何も言わず、ただ泣きじゃくっていた。
俺はミサキを支えながら家へ帰る。実家にいた時間より、実家に行った時間の方が遥かに長かった。

ミサキが、自室から出てこなくなった。人生で一番の絶望を味わったはずだ。
俺があんなに大丈夫だと言い聞かせなければよかったのか?なんて言えばよかったのか。
「ミサキ?入ってもいいかな?」
「ダメだよ。私と一緒じゃ」
今やドア越しでしか話せない。俺は、ミサキと親父を合わせた俺に怒りをぶつけ、全身あざだらけだ。
「何日も飲まず食わずで生きてけないよ。ほら、一緒にご飯たべよ?な?」
ドア越しに、生きなくていいよと聞こえた気がする。
なんで俺はあの時、無理やり部屋に入って抱きしめてやれなかったんだろう。ミサキが俺をもう信じてくれないと思ったから?ミサキを愛した自分は、ミサキに愛された自分は、こうも簡単に壊れる愛だったのか?

あれから2日経った。声をかけても、ミサキは返事をしてくれなくなった。やっと、ほんとにやっと部屋に入る決心がついたのだが、遅すぎた。
部屋はさほど散らかっていなかった。部屋にあったのは、手紙と…首吊り死体だ。


カズキ君へ

こんな私を愛してくれてありがとう。そしてごめんなさい。私を愛したせいで、君もたくさん傷ついたと思います。本当にごめんなさい。でも嬉しかったです。汚らわしい私でも愛されることはできるんだって。だから、この人生はとっても幸せでした。ありがとう。でももう終わりにしよ?。カズキ君。告白も、デートも、プロポーズも、君との日常全部が私の一生の宝物です。どうか生きてください。私の大好きなカズキ君。愛してるよ。じゃあね。バイバイ。

                  ミサキより

手紙の文字は、何箇所もにじんでいた。
俺はミサキを床に下ろした。
そして気づいたら、自分も首を吊っていた。






長っ!
あぁ、悲しいね
いいけど
こんなの書くの久々すぎて辛いんだけど

7/15/2024, 12:27:44 PM