今回のお題が配信されて、「この日この自国、何か大事な出来事でもあったっけ」と、ネットをドチャクソに探し回った物書きです。
最高気温、事件、地震発生履歴にスポーツ、
色々かき回した結果、「熱中症の患者が急増するのは、午後5時を起点に前後1時間」という情報をニュースでゲット。
水分補給と日陰の確保に気をつけたいものです。
と、いうハナシは置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。 いろんな場所の8月31日、午後5時のおはなしです。
まず最初の午後5時は、都内某所、某稲荷神社の敷地内にある、宿坊兼神職さんの自宅。
中では本物の稲荷狐の一家の末っ子が、子狐にはちょっと大きめのリュックサックに、
参拝者さんの実家で作ったという特製さつまいもチップスを詰めておりました。
「よいしょ。よいしょ」
末っ子子狐は一生懸命、リュックにチップスの袋を1個2個、押し込みます。
「よいしょ。よいしょ」
狐は肉食寄りの雑食性で、甘い野菜が大好き!
野生化では特にトウモロコシを好みますが、稲荷のコンコン子狐、さつまいもの甘さを、よくよく学習しておるのでした。
「よし!入った!」
どうやらこの稲荷子狐、大好きな絶品チップスを、食いしん坊仲間の人間とシェアしたい様子。
器用にリュックを背負いまして、とってって、ちってって。出かけてゆきました。
丁度8月31日、午後5時のことでした。
次の午後5時のおはなしは「ここ」ではないどこか。「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織。
法務部執行課のオフィスでの出来事。
お客さんはいわゆる「敵対組織」の元構成員で、
これから聴取を受けるところ。
お客さんはビジネスネームをアテビといいました。
「えっとねぇ、ミルクティーとぉ、クッキーと、
コンちゃん特製のお餅もどーぞ」
聴取にあたって、なぜか法務部ではなく、収蔵部の可愛らしい女性局員が絶賛対応中。
「さつまいもチップスも到着予定だよ〜」
さぁさぁ、どうぞ。
女性局員はアテビのティーカップに、タパパトポポ、丁度良い温度のミルクティーを注ぎました。
困惑気味なのが聴取予定の法務部職員です。
だって「聴取」です。「接待」じゃないのです。
なのにお茶は出てくるし、良い香りのフレグランスが香炉から広がってくるし、お菓子もたくさん。
しかも、さつまいもチップス??
「おい。何の真似だ」
法務部さん、収蔵部さんに聞きました。
「聴取の妨害でもするつもりか?」
「だってー、アーちゃん、怖がってるもん」
法務部にもお茶を注いで、収蔵部さんが答えます。
「アーちゃんは、あたしの一応、お友達なんだから。手荒な真似したら許さないよー」
大丈夫だからねアーちゃん。
アーちゃんのことは、あたしが守ったげるぅ。
収蔵部さんはそう言うと、にっこり、笑います。
だいたい8月31日、午後5時を過ぎた頃でした。
最後の午後5時のおはなしも、管理局の中。
最初のおはなしに登場した子狐が、とてててて、ちてててて、管理局の廊下を歩いています。
「おねーちゃん、おねーちゃん、どこ」
コンコン子狐、食いしん坊仲間の人間を探して、とてててて、ちてててて。
子狐の盟友は収蔵部職員なのですが、
何故か今日に限って、その収蔵部オフィスにも、その局員が担当している収蔵庫にも、
その局員の親友がコタツに刺さっている経理部にも、どちらにも、居ないのです。
あら不思議。
「おかしいなぁ。おかしいなぁ」
子狐は心細くなって、その心細さをまぎらわせたくて、ポリポリ、ぽりぽり。
リュックを開けて、1枚2枚、さつまいもチップスを食べて落ち着いて、歩いてまたポリポリ。
「おねーちゃん、どこだろう」
おねーちゃん、おねーちゃん。
コンコン子狐は収蔵部職員を呼びながら、尻尾を振って、チップスを食べて、廊下を歩き続けます。
それは8月31日、午後5時5分頃のことでした。
これで午後5時のおはなしは、おしまい。
最終的にさつまいもチップスは、5袋持ち込んだのに、いつの間にか3袋に減っておったとさ。
9/1/2025, 9:16:36 AM