険しい山道を登る。そのまともな足場がない山道はそれだけでも老体の私の体を疲弊させた。
やっとの思いで山頂に辿り着くと私は頂上のベンチに腰掛けてフッと息を吐いた。
その前方には沢山のコスモスの花が咲いていた。
あの頃は一輪だけであったのに。
そう振り返るとともに私はかつての親友との思い出を振り返った。
大学3年生の頃、私は登山サークルに所属していた。
とても雰囲気が和やかで人は少ないが落ち着ける場所だった。そんなサークルで私の親友こと晃と出会った。サークルの歓迎会の時、大学1年生だった私と晃は馬が合いすぐに腹を割って話すような仲になった。
山ではいつも組となってお互い登山でもかけがいのない相棒であった。
ところが話は戻り大学3年生の頃いきなり晃がサークルを辞めてしまった。
当時の私は驚いてすぐに晃の家を訪ねた。
玄関のチャイムを鳴らすと晃が私を出迎えた。
もう私が来た理由に察しがついたのか、自室にわたじ招き入れ、事のあらましを語った。
晃曰く、親が外国に移住したいそうだ。
晃の両親はかなり自由奔放な人でいつも晃は振り回されているのだという。
1人で暮らせば?と聞くと、晃はそれも言ったがそうしたら仕送りはしないし家族の縁を切ると脅してきたらしい。なんとも強情な両親である。
どうしようもなく、暫くお互い沈黙していたが、
突然私の口から「最後に鳶山登ろうぜ」という言葉がついてでた。
しまったと思ったが、思いの外、晃も乗ってくれて今度行くことになった。
鳶山とは、私達が1番最初に登った山だった。
標高は低いのにやけに道が険しく、2人で汗をダラダラかきながら登り終えたことを覚えている。
その次の日曜日、私達は鳶山に登った。
幾多の山を登ったおかげで以前よりもスムーズに登ることができた。頂上に登ると晃が突然、種を取り出した。コスモスの花らしい。
種は二つあった。1つはこの山に埋め、片方は晃の新たな家に埋めたらしい。
持ってきた水筒の水をコスモスにあげた。
水で湿ったコスモスの花は晃の家のコスモスと共鳴するように艶々と輝いていた。
お題君と最後に出会った場所
ここまで読んでくださってありがとうございました。
6/27/2024, 10:16:01 AM