『大事にしたい』2023.09.20
自分で言うのもなんだが、俺はモテる。アメリカで修行していたときなんて、彼氏と彼女の両方が同時に存在していた時もあるのだから、モテているほうだろう。
だからといって、ずっと一緒にいようだなんて口にしたことはない。あったのかもしれないが、それはリップサービスというやつでそこまで本気というわけではなかった。なので長続きはしなかった。当然だ。
日本に戻ってくるときなんて、当時付き合っていた何代目かもわからない仔猫ちゃんを泣かせるかたちで別れたのだ。あっちはどうやら本気だったらしい。
恋愛はあくまで人生経験の肥やし。
そういう認識だったから、本気で誰かを好きになったことなんてなかった。
しかし、戻ってすぐに知り合った毛色の違う仔猫ちゃんの存在が俺の認識を狂わせた。
バカみたいに素直で無邪気な仔猫ちゃんは、俺を手放しで慕ってくる。なにかあるたびに俺の傍に寄ってきて、あんなことがあったこんなことを言われたと教えてくれる。俺のほうが先輩だから、わからないことがあるとなんでも聞いてきた。
それが結果となって実を結んだとき、嬉しくて号泣する仔猫ちゃんを見て、本当の意味で好きだと気付かされた。
可愛くていじらしくて愚かな仔猫ちゃん。
そんな仔猫ちゃんへの感情は、これまで自分が抱いたことのないものだ。
仔猫ちゃんを自分のものにしたくて、押して押して押しまくって手に入ったときは嬉しかった。
だから、この好きだ愛しているという気持ちも、仔猫ちゃんという存在も大事にしたいと強く思った。
9/21/2023, 8:27:28 AM