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私は知っている。貴女はどんな人よりも努力を惜しまず、今まで何事にも頑張ってきたことを。

私は知っている。貴女が美術部のいけめんの先輩が好いていることを。

私は知っている。美術部の某先輩が貴女を好いていることを。

私は知っている。貴女が私になんてその気持ちを向けて下さらないこと。私じゃ不充分だということ。

私は知っている。貴女を諦めなければならないことを。

私は知っている。知っているはずなのに。
「あ、あの、私古典が苦手で…貴方が古典の点数がいいって先生が仰っていたので、宜しければ古典、教えてくださいませんか?」
そう、君がはにかんで言ってきた時、どうしてか断れなかった。

「この単語は___」
「…」
私の説明を真面目な顔で聞き入る貴女。そうして、大事なところは綺麗な字でノートに書き込む。あぁ、そういうところ。

すると、ばっとノートから私に視線を移した貴女は私に向かってこう言うのだ。
「ありがとう!!!ほんとに教えるの上手いんだね!!また教えてくれる?」
向日葵みたいな笑顔で。その笑顔も彼のものなのでしょう?

あぁ、妬ましい。お願いだ、神様。仏様。今、彼女の頭の中に彼じゃなく、私がいる時間をどうか、少しでも長く、否、このまま時間を止めてはくれないか。

9/19/2022, 1:12:21 PM