百瀬御蔭

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遠い宇宙の何処かの話。
彼女は星を見るのが好きだった。
病弱故に満足に外へ出ることもできず、家族が買った望遠鏡を大事にしていた。
ある日、星は人の形を成し始めた。そのうちの一人が、彼女の屋根裏部屋に興味を示すように近付く。
彼らの言葉は分からなかったが、二人は楽しく過ごした。

彼は星の王であった。
秘密基地というものを試しに作ってみれば、これが楽しかった。
狭くて小さい空間に、自分の好きを詰め込むのが良い、と。
彼は悩んだ。こんなに楽しいことを教えてくれた彼女に、何で返すべきか。もう時間がない、彼女がそうこぼしたのを思い出した。
そういうわけで────

星が降る。
彼女はその目で流星群を見た。
望遠鏡の傍らに眠る彼女が起きることはない。誰かが言った。
「これは弔いの光。夜が明ける前に、彼女を送り出そう」
こうして主を失った秘密基地だが、家族は変わらず手入れを怠らない。
「いつもありがとう。また会いに来るね」

『蒼き星を仰ぐ』
お題
静かな夜明けの

2/7/2025, 1:47:38 AM