鐘の音、というと、私はまず平家物語の冒頭の一節、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、……」という名文を思い出します。高校時代、古文の授業で習ったのが初めだったと思いますが、七五調のリズムが心地よく、記憶力の悪い私でも、「……ひとえに風の前の塵に同じ」まですんなり覚えられた記憶があります。
今でも風呂につかりながらぼんやりしているときなどになんとなく頭に浮かんで、「祇園精舎の……」とぶつぶつ呟いたりしています。
祇園精舎の鐘の音は、この世のすべてが変化し、流転するという真理を告げ知らせる音です。高校生のころはあまり意味も考えず、ただ言葉を唱えていただけでしたが、今はこの一節に込められた深い意味を噛み締めるようになりました。
自分もまわりも年をとり、街もどんどん姿を変えていく。変わらないものは何ひとつない。悲しいけれど、それが昔からの真理です。受け入れる他はありません。
とはいえ、変化が悲しいことばかりではないのも事実。私という存在も、いろいろな経験を経て、ぼんやりしていた高校生の頃から比べれば、確実に変化し、成長しているのであります。変化を前向きに捉えて、良い方向に変わっていけたら、と思います。
8/5/2023, 11:42:00 AM